アイスバスとは何ですか?

woman-in-ice-bath 熱中症の応急処置

「アイスバス」の由来と熱中症との関係について

熱中症のお話の中で「アイスバス」という言葉を耳にしますが、いったいアイスバスとは正しくは何なのでしょうか?

直訳すれば、アイス=氷、バス=お風呂、と言うことは「氷風呂」とになりますね。

コールドウォーターイマージョンという冷却療法から・・

アイスバスとは? なぜアイスバスというものが登場したのか?
諸説ありますが、元々はスポーツ医学などの、ある意味治療的な目的で行われるコールドウォーターイマージョン(CWI=冷却療法)で、氷水の中に全身や身体の一部を浸けることから来ているようです。
つまり、CWIを行う為に水風呂に氷をいれている様子を氷の風呂「アイスバス」と表現するようになったのだと思われます。

コールドウォーターイマージョンも直訳すれば、コールド=冷たい、ウォーター=水、イマージョン=浸す、漬ける、という事ですものね。

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行為、物体そのもの、場合によって両方を指す

この事から、何らかの目的を持って氷水のお風呂に入る事を「アイスバスする」と言ったり、その目的の浴槽や、代用される桶やレジャープールなどの物体そのものを指して「アイスバス」と呼ぶようになったと思われます。

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アイスバスと有名選手

(CWI=冷却療法)の詳細はさておき、スポーツ界ではアイシングという概念でプロ野球のピッチャーが登板後に肩に氷を当てて筋肉の炎症を抑えたり、打撲などの外傷の際にも氷で患部を冷やす事などはよく行われています。
アイスバスという形でなら、リーチマイケル選手や五郎丸選手でお馴染みのラグビー日本代表チームでは、練習後の疲労回復を早める目的でアイスバスを使用していたり、サッカーのなでしこジャパンで世界一になった川澄奈穂美選手も練習後にアイスバスを使用されてるそうです。

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熱中症とアイスバスの関係

熱中症には冷却療法!

さて、当サイトは熱中症にフォーカスしておりますので、熱中症とアイスバスの関係について考えてみますと、スポーツの盛んな米国では何十年も前から運動中の熱中症(労作性熱中症)について学術的な研究が進められており、上記のような筋肉疲労の回復や消炎を目的とした冷却ではなく、熱中症治療を目的とした(CWI=冷却療法)の研究がされていました。

様々な大学や研究機関の学者により、(CWI=冷却療法)を熱中症治療に使用する事が救命率が非常に高く有効であるという論文が発表されています1

スポーツ用のアイスバスを熱中症に流用

元々スポーツの現場には筋肉の疲労回復目的でアイスバスが設置されているケースが多かった事などから、夏季においては熱中症の予防や応急処置の冷却にアイスバスが使用されていた様です。

事実、2020東京オリンピックにおいても選手の熱中症応急処置用にアイスバスが設置されていました2

この様な事から、日本でも熱中症の応急処置には「アイスバス」で冷却するのが最善である!という意味合いで熱中症応急処置でも「アイスバス」という言葉が使われるようになったという説が有力であると思われます。

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今までのアイスバスの問題点と、応急処置専用のアイスバス

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レジャープール  組み立て分解が大変 大量の水が必要
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熱中症応急処置専用アイスバス

このようにアイスバスを用いて重症熱中症の応急処置を行えるのが最も良いわけですが、アイスバスの設置には大型のプールを組み立てたり、大きなレジャープールに空気を入れて大量の水を注入したり、それに伴う氷の量も大量に必要であったりします。

プロのスポーツチームや有力な大学の強豪スポーツチームが筋肉疲労の回復やパフォーマンスアップを目的に最初からアイスバスを設置してある場合は熱中症の応急処置に転用する事も容易ですが、熱中症の緊急時の使用だけを想定した場合、学校環境における体育の授業や部活動、グラスルーツの少年サッカーや少年野球のチーム、建設業界などの労働環境における熱中症の対策を考えた場合、熱中症の応急処置の為だけに設置しておく事はとてつもなくハードルが高く、現実的ではありませんでした。

逆転の発想も大切

熱中症における「アイスバス」の立ち位置はこのような形になるわけですが、従来のスポーツの疲労回復やパフォーマンスアップを目的とした大型のアイスバスを流用するのでは無く、最初から熱中症の応急処置に使用する事を目的とした熱中症応急処置専用機材のP-PECの常備が熱中症死亡事故を防ぐためにお役に立つと思います。

逆に熱中症用アイスバスのP-PECをスポーツの疲労回復のアイシング目的に転用する事も可能なわけですから、スポーツチームなどでアイスバスを検討する場合はP-PECを採用するのも賢明な考えではないかと思います。

熱中症の応急処置に使うアイスバスは、どんなもので代用しても良いので必ず用意するべきだと思います。アイスバスによって一刻も早く身体冷却が開始できる事が救命のカギになります。

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  1. 参考文献:Cold Water Immersion
    The Gold Standard for Exertional Heatstroke Treatment
    https://journals.lww.com/acsm-essr/fulltext/2007/07000/cold_water_immersion__the_gold_standard_for.9.aspx
      ↩︎
  2. 参考文献 日本陸上競技連盟公式サイト 東京2020オリンピックスタジアムにおける医療体制
     https://www.jaaf.or.jp/pdf/tokyo-report/058.pdf  ↩︎