アイスバスは病院でも使われているのか?
熱中症が発生したら応急処置にアイスバスを使用する事で救命率が各段に上がるというお話を当サイトではずっとしてきました。
では医療現場である病院に搬送された後はどのような治療が行われているのかについてお話したいと思います。
熱中症治療 医療現場での実際
スポーツや学校現場で熱中症が発生したとき、残念ながらP-PECが開発されるまでは応急処置用のアイスバスが存在していなかった為に、冷却効果の低い首筋や脇の下をアイスパックで冷やした程度の気休め程度の応急処置で病院に搬送されるケースがほとんどでした。
では、病院に搬送されたあとの処置や治療はどのように行われているのでしょうか?
病院では水分の補給の為の点滴等を行うほか、深部体温が高い状態が続いた事によって臓器が障害を受け、その結果現れる合併症の様々な症状に対しての薬剤投与などでの対応が行われます。
また、物理的に体温を下げるための手段としては、冷却ブランケットや冷却シートで全身を覆ったり、アルコールに浸したガーゼを体に当てて外部から送風する事で冷却したり、機械で血液を抜き取って冷却して再度体内に戻すというような方法も試される場合があります。
そして、最もシンプルで効果的な方法として患者の全身をアイスバスに浸ける冷水浴法(浸漬法)が行われています。
意識が戻る確率3%の重症患者をアイスバスで救命した実例
「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命」 というテレビドラマを覚えておられる方も多いでしょう。
今回はドクターヘリによって搬送された重症熱中症患者を意識の回復率3%という絶望的な状況から、アイスバスを用いた適切な治療によって、正常な状態で退院できるまでに劇的に回復させた救命医の治療例をご紹介します。
実は熱中症応急処置用アイスバスP-PECが誕生するきっかけとなったのがこの救命事例なのです。
お話の舞台は新潟県の魚沼市、おいしい魚沼産コシヒカリで有名な田園地帯です。
そんな魚沼地域に不足する救命救急医療や高度医療を確保し、周辺医療機関との連携と役割分担による新たな医療体制を構築するため、平成27年6月に「新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院」は開院しました。
その魚沼基幹病院の救命救急センター長の山口省吾ドクターが今回の主人公です。
患者は登山が趣味の男性、ある蒸し暑い日の登山中に熱中症になってしまいます。
仲間が携帯電話で重篤な状態である事を告げ救急要請します。
現場は山の中、熱中症に限らず救命は時間との戦いです。
通報を受けた消防指令室は高度な医療の施せる病院へ運ぶため、救急車の地上チームから消防防災ヘリへのリレー搬送を決断。
地上チームが患者の元に辿り着き、重症熱中症の疑いの情報を本部と共有。
飛行条件の悪い中、防災ヘリチームは懸命なアプローチで患者のホイストに成功します。
そして、搬送情報を受け病院の屋上のヘリポートで待ち構えていた山口ドクターがすぐさま準備していた氷水の入ったアイスバスに患者を浸し治療を開始しました。
※この治療の様子の詳細は魚沼基幹病院のブログに山口先生自らが詳細に書かれていますので、こちらをご覧ください。
魚沼基幹病院のブログ「重症熱中症は氷水にジャボーン!」※新しいタブで開きます
このように、実際の医療現場でも熱中症の治療にはアイスバスが使われており、山口先生も重症熱中症の治療にはアイスバスの氷水にジャボーンと浸けるのが最も効果的で現実的であるとおっしゃっています。
この実話は私自身が、海外ではスタンダードな冷水浴法での熱中症治療を日本でも応急処置として簡単に実行できる機材を製造できないかと模索していた時期、失敗の連続で挫折しかけた時に、この山口先生のブログを拝見し勇気づけられ、アイスバスP-PECという製品の開発を続けてこられたという背景となっています。
応急処置の現場にもアイスバスがあれば!
このように重症熱中症の患者は医療機関に搬送されてからもアイスバスで処置を受けている、ということは現場でも同様の応急処置が行えれば救命の可能性はとても高まる事がお分かり頂けると思います。
今まではアイスバスみたいな大がかりなものは、熱中症の発生に備えて準備する事は無理だと思われていましたが、3秒で設置できる応急処置用アイスバスP-PECの誕生が救命の可能性を大きく変えました。
事前に組み立てや空気入れの準備をすることなく、AEDのように緊急事態になってから取り出せばすぐに使えるアイスバスP-PECをぜひご検討下さい。
そして、スポーツや学校現場で一人でも多くの子供たちやアスリートの命を救うために、たくさんの人に当ブログの事をご紹介頂ければ幸いです。