救急車を呼ぶか迷ったら
まず「クールファースト・トランスポートセカンド」を肝に銘じて!
今回の記事のタイトルの通り、救急車を要請するか否かを迷わずに的確に判断する為には、後述のオレンジ色の枠内の1番から3番の要素を理解しておくと便利です。
しかし、最も大切なことは「病院へ運ぶよりも、現場ですぐに冷やす」このクールファースト・トランスポートセカンドの考えを肝に命じて置くことです。
熱中症からの救命は如何に早く冷却を開始し、如何に短時間で体温を下げるかにかかっているのです。
過去には重度の熱中症は治療のできる施設へ運ぶことが優先されていましたが、近年の研究によりこの考えは覆され、現在では1に冷却、2に搬送つまり、クールファースト、トランスポートセカンドという事がいわれています。
もちろん、救急車要請が必要であると判断したら、有効な冷却と通報を同時進行で行うのがベストですが、現場に少ない人数しかいなかった場合は、通報に時間を割く前に第一に全力で冷却の準備を開始して冷却しながら119番通報の判断をするのが良いでしょう。
簡単な判断基準3点
熱中症は時に死に至る病気である事はよく知られています。
今回は皆さまの周りで熱中症が発生して重症の疑いがあるとき、救急車を呼ぶべきか否かの判断基準についてです。
さて、巷に出回る様々な応急処置のフローチャートには次のように記されている場合が大半です。
「意識がなかったら救急車を呼んでください」と
これはだれでも分かります。
しかし、意識が無い場合以外にも救急要請をするべき場合もあるはずですよね。
逆にこの症状で救急車を呼んで良いものか?と迷う場合もあると思います。
そんな時の判断基準についてわかりやすく解説していきたいと思います。
119番を躊躇させる心理
熱中症で人が倒れたような緊急事態の現場に実際にに立ち会うと冷静さを保つのはかなり困難ですし、学校関係者やその場の安全管理者の立場からすると、正直言って、大きな騒ぎにしたくないとか、新聞沙汰になると困る、などの余計な心理が無意識のうちに働く場合もあると思います。
そんな時こそ、現場に居合わせた人の適格な判断で命が助かるかも知れないのです。
まず、ことを大きくしたくないとかいう気持ちは捨てましょう。
躊躇して後遺障害事故や死亡事故になるほうが何倍も大変な事です。
まず、患者の命を救えるかどうかに神経を集中しましょう。
次の3つに該当する場合は救急車を要請します
念の為に119番しておこうという心理と救急車ひっ迫
さて、ここまで救急車要請の判断基準をお話してきました。
組織の世間体を気にして要請を迷う心理もあるというお話もしましたが、逆に「念の為に救急車を呼ぼう!」と考える人も多くいます。
軽い気持ちでそのように考える場合もあるでしょうし、先ほど述べたような判断基準を知らない為に、ただただ不安で119番してしまう場合もあるでしょう。
ここ数年、救急車ひっ迫という現象が問題になっています。夏季においては通常期には発生しない熱中症での救急要請が爆発的に増えることで救急車の数が足りなくなるというものですが、その大半(約65%程度)が軽症であり、本来は救急要請の必要はなかったというデータも出ています。
このような事により、本来救急車を必要としていた重症の熱中症患者、交通事故や急病で本来必要であった患者に対しての救急車の到着が大幅に遅れるという問題が救急車ひっ迫という問題です。
熱中症の応急処置においても、正確な知識の習得と適格な判断で「念の為に救急車」という安易な考えはしないようにしたいものです。
#7119で相談するという選択
皆さんは#7119というサービスをご存じでしょうか?
救急車ひっ迫の問題は前述のとおりですが、やはり現場で慌ててしまったりすると的確な判断が難しい場合もあります。
そんな時は#7119という選択肢も覚えておいてください。
#7119は専門のスタッフが、救急車を呼ぶべきか?の判断や、どういう対応をすれば良いか?の相談や周辺の医療機関を紹介してくれたりする公的機関によるサービスです。
もし#7119の事や番号を忘れてしまったら、まず119番して「すぐに来て」というのではなく「こういう状況です、どうすればいいですか?」と相談してみるのも救急車ひっ迫の解消につながると思われます。
119番したら絶対に来てもらわなくてはダメというわけではないことを覚えて置きましょう。
総務省・東京消防庁の救急車要請に関する解りやすい情報(新しいタブで開きます)
まとめ
以上、熱中症で救急車要請を迷ったときの判断基準やとるべき行動についてお話ししてきました。
熱中症は本当に怖い病気です。
シーズン本番になってから慌てないように、シーズンオフのうちに今回のような知識の整理や機材の準備を整えておく事が大切です。
詳細なデーターやエビデンスは機会があればブログや固定ページでどんどん紹介していきたいと思います。
- 参考文献 国際医療福祉大学 成田病院 熱中症対策について救急科部長からのメッセージ https://naritahospital.iuhw.ac.jp/topics/2023/20230715.html ↩︎
- 参考文献 文部科学省スポーツ庁委託事業
独立行政法人日本スポーツ振興センター学校安全部 熱中症への対応 https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/anzen_school/R3poster/B2_poster_nettyusyou.pdf ↩︎